
石川 多歌司 選
2024(令和6)年
大阪の芭蕉忌
兼題句
世の無常思ひつつ謝す報恩講(東近江市)中村 蓉子

ここ数年、新型コロナウイルス禍で人の交流が断たれ人間関係が阻害されてきた。又、AIの発達が著しく愈々ヒューマンリレーションが疎かになってしまい無情な世相になってしまった。そんな世の中にあっても親鸞聖人の教えは普遍的で、日々その教えを守って生きる作者。報恩講の旅に感謝の念を新たにする作者の感慨が伝わってくる。
とつとつと被爆を語る生身魂(枚方市)伊瀬知 正子

一九四五年八月六日広島に、同月九日長崎に原子爆弾が投下され甚大な被害を蒙った。七十九年の歳月が経ち被爆した方々は生身魂と言われる年齢となって、今も訥々と当時のことを語っている。今年のノーベル平和賞は、原爆の被害者団体に授与された。誠に意義深いことで、改めて原爆の恐ろしさを認識し原子爆弾の廃絶を説く生身魂である。
席題句
御堂とは街のオアシス翁の忌(西宮市)杉﨑 よしこ

難波別院の山門は数年前に新築されてレストランや土産店、ホテル等のある高層ビルになった。浄土真宗の信者のみならず一般市民にとって憩いの場として親しまれている。大都会の繁華街の中にあってまさに砂漠の中のオアシスのような存在である。まして、年に一度大阪の芭蕉忌にお参り出来ることに喜びと感謝の作者の感慨が伝わってくる。