生のみが我等にあらず 死も亦我等なり ~清沢 満之~
初めて人の死に直面したのは小学生の時。実の母であった。本堂に響き渡る読経、涙を堪える父の横顔、そんな通夜葬儀の風景は今も鮮明に残っている。
「人は死を感じた時、優しくなれる」。そんなことを聞いたことがある。晩年、厳しかった母が妙に私のことを心配したのは、死を間近に感じていたからであろうか。そして、穏やかに過ごした余生は自分の生を見つめ返した時間であったように思える。
清沢師の言葉は、「生死一如」である我が身の事実を教えてくれる。母は、死という不安に苛まれる自分の姿が見えたからこそ、今を生きる大切さを感じたのではないか。「一生懸命生きや!」。そんなふうに、今、母から呼びかけられている気がする。
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