天国と浄土は違うのですか?
問 人は死んだら天国へ行くのだと思っていました。しかし、祖母は「死んだら天国ではなく、お浄土へかえるんだよ」と言っていました。天国と浄土は違うのですか?浄土はどんなところなんですか?(16歳・男性)
答 お葬式に行くと、亡くなったかたの友人がお別れの言葉を読まれるのを聞く機会がよくあります。近頃はその時「天国で幸せに暮らしてください」などとおっしゃられることが多いように感じます。またテレビや新聞などでもこの言葉によく出会います。すっかり日本人が「死んでから行くところ」は、「天国」という名前になってしまったようです。
もともとこの「天国」という言葉は、英語でいう「heaven」の訳語であって、キリスト教の神の世界を意味します。一方仏教では仏のまします世界を「浄土」と呼びます。とくに真宗の教えでは阿弥陀如来が本願によって建立された国を「浄土」といい、あるいは「極楽」ともいうのです。ですからあなたのおばあさんのおっしゃるとおり、真宗門徒であるならば、「死んだらお浄土へ還る」が正しいのです。
また、仏教でいう「天国」とは、文字どおり「天が住まう国」という意味です。天とは、神様のことです。仏教が発展する中で、インドのヒンドゥの神々が取り入れられ、仏教を守護する天となりました。帝釈天や弁財天などが有名ですね。しかしこの「天国」は、神話の中で神々が争ったり、憎しみあったりする場面がたくさん書かれてあるとおり、あくまで煩悩にとらわれた世界です。神様ですから特別な力があったりしますが、しかしそれでも苦しみ、救いを求める存在なのです。それに対して「浄土」は、そういった悩み苦しみから完全に解放された世界のことを指します。ですから冒頭にあげたように、仏式のお葬式で「天国」という言葉を使ってしまうと、その亡き人はまだ助かることができずに、煩悩にとらわれた世界を流転し、さまよっているということになってしまいます。
それではそういう呼び方の違い、言葉の意味の違いだけなのでしょうか。じつはもうひとつ、「浄土」と「天国」には大きな違いがあります。それは「浄土」とは場所の名であるばかりではなく「はたらき」をあらわす言葉だということです。
おばあさんが、「死んだらお浄土へ還る」と教えてくださったそのお言葉によって、あなたの上に問いが生まれました。このおばあさんのお言葉がなければ、あなたがこのような疑問を持つこともなかったでしょう。これはたいへん尊いことだと私は思います。なぜならば、その時、真宗のみ教えをいっぱいに聞いてこられたおばあさんを通して、阿弥陀仏のこころがあなたに届いたからです。なかなか気づくことは難しいけれども、確かにはたらきかけてくださったのです。これこそが浄土のはたらきなのです。
浄土や極楽などと言うと、「そんなところは死んだ人が行くところで、まだ若く元気な私には関係がない」と思われるかもしれませんが、そうではありません。今生きているこの私にこそ、はたらいてくださるのが「浄土」なのです。(澤田 見)
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