花まつりで子どもに聞かれて

もしもし相談2016年4月 8歳の娘と一緒に、お寺の花まつりにお邪魔しました。本堂に小さなお釈迦さまが安置されており、他の参拝者と一緒にひしゃくで水をかけ、お参りしました。あとで娘に「なぜ水をかけるのか」「どうしてあんな格好をしているのか」など色々聞かれて困りました。どうしてか、教えて下さい。(38歳・女性)

 

 八歳の娘さんと花まつりに出かけられたご様子、とても微笑ましく、また、お子様ならではの視線からの問いかけ、私も一緒に訪ねさせていただきます。

まず「花まつり」は、「灌仏会」または「降誕会」とも呼ばれ、お釈迦さまの誕生をお祝いして行われております。
仏伝によって様々ですが、お釈迦さまは紀元前六世紀頃ヒマラヤ山脈の麓、カピラヴァスツという国の釈迦族の王子として誕生されました。母親がお産のために里帰りする途中、ルンビニーの花園で「無憂樹」の枝に手を伸ばそうとした時に右脇から誕生されたと伝わります。その時に、竜王が喜んで甘露の雨を降らせたという伝承があります。甘露とは、インドの言葉で「アムリタ」と言われ、「不死」と訳されます。「死の恐れから解放された」という意味で、「無憂樹」、憂いの無いいのちに生きた人の誕生を祝したのです。
そうして天から祝福を受けて誕生されたお釈迦さまは、七歩歩まれ右手で天を左手で地を指差して「天上天下唯我為尊 三界皆苦吾当安之」(『修行本起経』)「生きている限り苦しみや悩みから逃れられないでいるこの世の全ての者たちに、真に安らぎを与えようとして、私はこの世に生まれてきました。これは私の使命で、このためだけに私は尊い存在として生まれてきました」と述べられたと伝えられています。
こうして確かめていきますと、お釈迦さまは花園で誕生されたので、「花御堂」としてお花を装飾し「花まつり」と呼ばれているのでしょう。安置されているお釈迦さまのお姿は、天地を指すお姿に由来しています。水をかけるとのお尋ねは、甘露の雨に因んでいます。ですから水ではなく、実は「甘茶」を使用していて、やさしく注いでいただけると良いと思います。
では、なぜお釈迦さまの誕生を祝うのでしょうか。親鸞聖人は、「正信偈」の中で、「如来所以興出世 唯説弥陀本願界」(お釈迦様がこの世にお出まし下さったのは、ただひとえに共にあるいのちに目覚めましょうという阿弥陀仏の本願を説くためです)と、お釈迦さまの誕生について述べられています。私たちは、色々な人との関係の中で生活をしています。その日常生活の中で無意識の内に、また、根拠なく自分と他人を比べ、一喜一憂し、優越感や劣等感を抱き、善いとか悪いとかで他者を、自分自身を引き裂きながら苦しみ悩んでいます。しかし、真に安らげる道として、「あなたはあなたのままでいいよ」と、阿弥陀仏の本願に呼びかけられ生きていける道があると教えて下さっているからなのです。
ご相談にお答えしていますと、金子みすゞさんの「私と小鳥と鈴と」という詩を思いだしました。お子様と一緒に味わってみて下さい。
「私が両手をひろげても/お空はちっとも飛べないが/飛べる小鳥は私のように/地面を速くは走れない/私がからだをゆすっても/きれいな音は出ないけど/あの鳴る鈴は私のやうに/たくさんな唄は知らないよ/鈴と、小鳥と、それから私/みんなちがって、みんないい」
お釈迦さまの誕生の謂れとその教えに出遇い、かけがえのないたった一つの尊いいのちに目をむけ、共に一緒に歩んでいける世界に触れて慶んだ人々が、今、「花まつり」を通して、日頃の私の姿に気付いてほしいと伝えて下さっているのですね。   (三好 泰紹)

い合わせ

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