一度きりの尊い道を 今、歩いている ~榎本栄一~
「人生は一度きりだぞ」という言葉をよく聞く。いつか死がやってくるから後悔しないように生きよということだ。そこには死を厭い、遠くへ追いやり、自己中心的な思いで生きている私の姿がある。
仏教は死から離れようとする私たちに静かに死を見据えることができる道を与えてくれる。死と共に生きているのだと教えられれば、こうして生きていることは不思議であり、私の思いを超えた事実であると気付かされる。その事実を受け止めてみれば、どれほど得がたい今を生きているかが見えてくる。
今、ここにこうして生きているのは当たり前のことではない。思いや計らいを超えた尊い事実の中で生かさせていただいているのだ。