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 これからが これまでを決める ~藤代 聰麿~

2025年1月掲示板の言葉

 ちょうど一年前の元日、故郷である能登半島を大地震が襲った。大晦日までは他人事であった災害が我が身に降りかかり、明日のありさまさえ想像できない絶望の淵で、標語の言葉を拠りどころに日々を重ねてきた。
 「これまで(過去)が、これから(未来)を決める」と言う方がしっくりとくるかもしれない。しかし藤代師は、「これからが、これまでを決める」と言い表された。
 華々しい未来が約束されている訳でも、苦々しい過去が清算される訳でもないだろう。しかしこれからの生き方を通して、自らが歩んできた人生の見え方が転じられるよう、精進するばかりである。

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 他人の過失は 見やすいけれども 自己の過失は見がたい ~釈尊~

2024年12月掲示板の言葉

  私はよく人を疑う。先日、窓ガラスにひび割れを見つけた時もそうだった。誰かが何かをぶつけたのだと飼い猫までを疑う始末である。しかし、よくよく思い返すと、草刈機の飛び石が何よりも疑わしく、どうやら私が犯人だったらしい。それでも、なかなか過ちを認められない。
 釈尊は「他人の過失は、もみ殻のように細部まで暴き、非難し、世間に知らせようとする」と、人のありさまを言い当てている。
 人を疑うなら、その何倍も自らを省みるべきだろうが、実際はその逆である。どこまでも自身を正当化し、非を認めず、他に転嫁しようとする私の姿を知らされ、ただただ頭がさがるばかりである。

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 ときにしくじりながら 一日いちにちの味ふかくなる ~榎本 栄一~

2024年11月掲示板の言葉

 仕事で失敗した。簡単な仕事だと楽観し、期日に間に合わなかったのだ。同僚に心配をかけ、情けないやら悔しいやら…しばらく夜も眠れなかった。
 家族に打ち明けると、「これからどうすればいいか、わかってよかったんじゃない?」と応えてくれた。何故だかわからないけれど、ふと「あたたかさ」を感じた。同じように失敗して思い悩んだ経験があるからこそ、そんな言葉をかけてくれたのではないだろうか。
 失敗しないに越したことはないが、失敗しないとわからないことも沢山ある。そして、そこで感じた悔しさ、悲しみ、怒り、たくさん悩んだそのことが、人に寄り添うことをうながすのではないか。

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 困難は機会の別の顔である ~アルベルト・アインシュタイン~

2024年10月掲示板の言葉

 長年使用していた我が家の冷蔵庫が、とうとう寿命を迎えた。連日の猛暑の中、傷みやすい中身をどう消費するか、代替品をどうするかといった「トラブル」としての側面ばかりに苦労した。
 しかし、新製品の購入を検討している時、“これを機に家庭のエネルギー消費を見直そう”とか、“冷蔵庫の中身は計画的に購入しよう”と家族から声が挙がった。平素、冷蔵庫の便利さを「当たり前」にして、食品や省エネに対する意識がおざなりになっていたことに思い至ったのである。
 一見、自分を煩わす出来事が実は、生き方を見直す貴重な機会なのかもしれない。それは人生においても、同じことが言えるのではないだろうか。

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 老いが 病が 死が 私の生を問いかけている ~二階堂 行邦~

2024年9月掲示板の言葉

  父の死後、生前の手紙を親しい方から見せてもらった。そこには、「仏様から“がん”という病気をいただいた。ありがたいことだ」と綴られていた。闘病中、次第にできることが少なくなり、住職として、人として、苦悩している姿しか知らなかった私だが、思わぬ形で父の本心に触れた気がした。
 晩年、老・病・死という、自分では解決できない現実に直面した父。ただ、周りの人によって助けられ、支えられしているうち、“生かされていた”事実に思い至ったのではないか。
 何事も自己中心的に捉え、思いどおりに生きようとする私に、父の言葉は、「それでいいのか」と呼びかけてくれているようだ。

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 他人の心を知ることは 何でもない 自分の心を見ればよい ~毎田 周一~

2024年8月

 「自分のことは自分が一番わかっている」と誰もが考えている。小さい子どもでもそうだ。小学生と中学生の我が子は、問題が起こると自分が何とか傷つかないよう責任を転嫁し、他人のせいにするのが得意技のようである。注意しても聞く耳を持ってくれないのは、前述の思いがあるからだろう。
 さて、かくいう私はどうだろうか。大人になれば変わっているかというと、そうでもない。むしろ、自分自身を見直しているつもりになって、さらに言い訳がましくなっている。
 お釈迦さまは、私たちに「自らを知りなさい」と教える。教えに照らされ、見えていない私、知っているつもりの私が、仏さまから知らされる。

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 涙は 涙にそそがれる涙に たすけらる~金子 大榮~

2024年7月

 書店に行くと「ポジティブに生きる方法」などの啓発本が人気だ。こうした本が好まれる背景には、世の中の成果主義的な考えや、前向き思考を良しとする風潮があるのだろう。それゆえ、ネガティブ思考は好まれず、悩みや弱さを相手に打ち明けるのは難しい。
 学生時代、怪我のためクラブ活動を挫折した経験がある。退部せざるを得ない状況の中、努めて明るく振る舞っていたが、心は悲しみに暮れていた。その様子に気づいた友人が、私の代わりに涙を流してくれた時、本当に救われた思いがした。
 この言葉は「悲しみは悲しみを知る悲しみに救われ…」とはじまる。私の悲しみを解かしてくれた友人の涙は、今も私を支えようとはたらき続ける。

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 出会うということは出会い続けていくこと~宗 正元~

今月の言葉

2024年6月分

 「若いころから熱心に仏教を学んでこられ、御歳80を過ぎる門徒さんから「この歳になってようやく、お経に書かれていることが少しずつ分かってきたような気がします」といわれたことがある。正直驚いた。自宅にはたくさんの仏教書が並び、聞法会にも欠かさず参加しているその方の言葉だからだ。

 おそらくは、お経の内容を理解するということよりも、学びを積み重ねて仏法がその身に染み込み、出来ることが少なくなってきてようやく、自身のありさまをいただけるようになってきたのだろう。

 この方の生涯は、仏の教えを聴聞し、自身に出会い続けてゆくという旅路であり、まさに今、仏道を歩んでおられるのだ。

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 一人であって一人ではないのです~高 史明~

今月の言葉

2024年5月分

 「俺の勝手だろ」。若い時はよく口にしていた。俺個人の人生だ。何かにつけて口出しされるのが堪らなく嫌だったが、その言葉を口にした後には、決まって妙な違和感にみまわれていた。
 〝関係ない”と相手を拒絶してみても、私の思いや都合に先立って、何かが、どこかで既に繋がってしまっている。一人で何とかなると思っていても、どうしても他の人に頼らざるを得ない事が必ず出てくる。結局、一人でありたいのに、決して一人になりきることができなかった。
 もう一人ではどうしようもないと思った時、あの違和感の正体は、一人でいることのできない、本来の私の叫び声だったのかもしれないと感じた。

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深い悲しみ 苦しみを通してのみ 見えてくる世界がある ~平野 恵子 ~

今月の言葉

2024年4月分

 人生において、よもや自分の身の上に起こると思えないことが突然起こることがある。たとえ、その時、それが抱えきれないほどの苦悩であっても、その事実を身に受けてきた自分が、そのお陰で多くのことを知らされ、いつか人生の喜びに変わる時が、きっと訪れる。
 ただそれは、深い悲しみと苦しみを見つめてこそ、見えてくる世界であることを忘れてはいけない。そしてそこに悲しむ自分そっくりそのまま支えてくださる阿弥陀さまのはたらきがあることをしらされるのである。
 大切なのは、支え続けて絶対に離すことない阿弥陀さまのはたらきの中に私がいるということだ。

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